
中央アルプスの宝剣岳周辺は、しらび平からのロープウェイのおかげで労せずに標高2,600m超の高山まで運んでくれるために非常に人気の高い山域です。
私も過去に4,5回訪れたことがありますが、すべてロープウェイのご厄介になりました。
手軽に高峰の雰囲気が味わえるがゆえに安易な装備と未熟な経験で3,000m級の高峰に取り付くハイカーが後を絶たないとか。
ロープウェイ終点の畳平にある「登山補導所」のチェックがきびしいことは雑誌か何かで知っていましたが、いやーここまで厳しいとは。
今回体験してみて、それがよーくわかりました。
「モシモシ!登山計画書を出して下さい。」
(計画書を提出すると)
「ええー! 宝剣岳? ちゃんと装備はあるんですかー?」
(持参装備表を示して、ロープやガチャ類の説明をすると)
「うーむ。本当に行くのー? なるほど、ヘルメットもあるのか・・(独り言調で)」
(そして、決め手は・・)
「ふむふむ。 全員山岳保険に加入済みなんですね。」
「保険に入っているようだし、まあ良いでしょう。計画書もよく出来ているし。」
「上(宝剣岳)に行ったら手前に二人(補導員)いるから、よく話聞いてくださいね!」
・・・ということで、第一の関所はなんとか通過しました。
さて、問題は第二の関所です。
宝剣山荘に着いて、時間があったので翌日の宝剣岳越えのためにルート観察に出かけました。
すると、宝剣岳登山ルートの入口に強面(こわもて)の補導員氏が二人いらっしゃいました。
「モシモシ! あんたたちこれからどこ行くの!」
(びくっとして)
いや、あの、その、明日のために宝剣越えのルート偵察です。これ以上は登りません。
「あのねー!ここから上はできれば登ってほしくないんですよ。危険だからね。」
いや、ちゃんと装備は持ってきましたよ。ロープだって、ヘルメットだって、デッドマンだって、スノーバーだって・・・
「いくら装備持ってきてもねー。 要は使いこなせるかどうかでしょ? あんた達に使えるの?」
(さすがの小屋番子もムッとしましたが、・・・ここはガマンです。)
(でも、痛いところを突くよなあ・・・たしかに最近、ギアの操作、練習してないし・・・)
はあ、でも補導員さんにはご迷惑をおかけしませんから・・・そこを何とか・・・
「あのねー。別に登ってもいいんですよ。あなた方のイノチなんだからね。」
「困るのは私らじゃないし。」
(ドキッ。そこまで言うか・・・)
はあ、まあ、ともかく絶対に事故のないようにスタカットで安全第一で行きますから。
もう慎重運転で行きますんで。よろしくお願いします。(最敬礼!)
・・・とまあ、第二の関所の厳しいことといったらありませんでした。
私たちが中高年パーティーだということで、彼らも余計に心配なのでしょう。
それだけ、ここ宝剣岳の登山では事故が多発しているし、事故の種類が安易な装備と未熟な登山経験に起因するものであることを改めて得心しました。
多発する事故を未然に抑止するために、あえて嫌われることを厭わずに手厳しい言葉を投げつけるのでしょう。
言い方はかなり辛口ですが、冷静に考えれば言わざるを得ない立場はよく理解できます。
山小屋には県警の山岳警備隊の方も常駐しているようでした。
安全管理はかなりのものでしたが、それでも前日にお隣の木曽駒ヶ岳で68歳の男性の死亡事故が1件あったようです。
ロープウェイという文明の利器の代償が悲しい山岳事故なのですね。
中高年にとって、労せずして2,600mの高地に運んでくれる魅力はたまりませんが、やはり登山の最高の歓びは、どっぷり汗を流して散々苦労して到達したときに得られる達成感です。
苦労を通じて山登りのスキルも自然に身につくというものです。
初心に帰って、基礎から出直す良い機会を与えてくれた連休山行でした。