2006.01.07

二人日和

hutaribiyori45年間連れ添ってきた神官の装束を作る職人の夫と難病に冒された妻のラブストーリーです。
舞台は京都です。朝の街の清々しさや鴨川のゆったりとした流れを見ていると、本当にゆっくりと時間が進んでいく街なんだなあと感じました。

今風の愛情表現はいっさいできない不器用な夫を栗塚旭が、病魔に冒されつつも凛とした気丈さを失わない妻を藤村志保が演じていました。

不器用な夫ではあるけれど、彼流の妻を励ます姿にはホロリときます。
普段の何気ない所作にも夫婦を結ぶ絆がとても強く感じられ、「ああ、こういう関係っていいな。」って思わずにはいられない作品でした。

日常の忙しなさや人間関係の煩わしさから解放され、ひとときをゆったりとした時間の中に身を置いてみたい人は必見です。

映画が終わって立ち上がろうとしたら主演の藤村志保さんが舞台の袖で突然の挨拶。
間近で主演女優を見たのは初めてでしたが、とても気品ある女優さんという印象でした。


岩波ホールにて2月10日(金)まで

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2005.09.16

運命を分けたザイル

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ようやく我が街でも上映されることになったので仕事帰りに観てきました。
山屋さんの間ではかなり有名になっている映画なので今更の感もなくはないのですが、感想をひとつ。

ペルーアンデスの未踏の西壁。英国の若い登山家二人が挑みます。
初登攀に成功したものの、下山中パートナーがまさかの滑落・骨折。そして救出下降中にアクシデントが。

たった一人で救出作業をすることの困難さがとてもリアルに描かれています。
登山(特にクライミング)をやる人なら二人の登山者が置かれている状況がよくわかります。レスキュー作業の段取りも「こういう状況ならこうやるしかないだろうなあ」と納得させられます。

結局レスキューには失敗し、やむなく二人を結んでいたザイルの切断を余儀なくされます。
現存する実在の人物の回想シーンを含めて構成されていることが異色です。
「ザイル切断」というとてつもなく重い決断を余儀なくされた当事者の葛藤は推して知るべし。また、その決断をした後の倫理的な批判・非難もまたしかり。
観終わった後、こういう場面にだけは出くわしたくないな、と心から思いました。

この映画を観て、ギャチュンカン北壁での山野井泰史さんの生還劇を想起しました。
絶望的な状況下であっても、冷静に最後まで諦めなければ不可能を可能にできる、という人間の底知れぬ生命力を強く思い知らされた映画でした。

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2005.08.17

ヒトラー ~最期の12日間~

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重たい映画でした。
見終わったあと、なかなか席から立てなかったというか・・・。
映画の評は他に譲るとして、感じたことを少しだけ。

身近な人間に対しては思いやりや優しさを十分にもっている普通の人間。
しかし、「総統」という衣を身に纏ったとき、狂気が全身を支配します。その二面性のあまりの落差がどうしても理解できませんでした。

最後までヒトラーの側にいたユンゲという女性秘書(実在の人物で2002年まで存命)の目を通したヒトラーの人間像なので、かなり事実に近いと感じました。

表題のとおりヒトラーが自殺をするまでの最後の12日間に焦点を絞っています。
よって舞台はベルリンの地下防空壕内です。
敗戦が目前のベルリン。戦後の戦犯処理に浮き足立つ部下たち。
憎悪、裏切り、悔悟、自暴自棄、諦め、退廃、現実逃避、、、
いやはや破滅を前にした人間の弱い面のオンパレードにぞっとしました。

ヒトラーを人間として描くというだけで拒否反応を示す人々がいる中での映画製作です。
監督のオリヴァー・ヒルシュビーゲルはすごいです。
同じような内容の映画を果たして日本で作ることができるだろうか。

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2005.07.31

アイガーにヘリ登頂?

何気なく回したチャンネルの画面にヨーロッパアルプスの景色が広がっていました。
ああ、いいなあ。
ずっと以前に出かけたアルプスの景観が脳裏に甦ってきます。

しばらく観ていたら、「なにっ!」
なんと、アイガーの山頂にテレビリポーターがヘリで着陸するというのです。
「ホントかよ?」
とテレビ画面に見入っていると、たしかにヘリに乗った女の子がホイストで吊されてアイガー山頂に降りたったのでした。

サポートしていたのは懐かしいあの加藤滝男氏。ヒゲの似合ういいオジサンになっていました。
山頂に立ったリポーター嬢はおっかなびっくり。
それもその筈です。原宿あたりを散歩している方が似合っているフツーの女の子が、突然アイガー山頂に立ったのですから。
いきなり非日常の世界に迷い込んだ可哀想な女の子。
できれば代わってあげたいなあ。

傑作だったのは、ミッテルレギ稜から二人の登山者が上がってきた時です。
登山者たちも驚いたことでしょうね。
いるべきではない人間がそこにいたのですから。
くわしくは、こちらをご覧下さい。

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2005.05.14

星にのばされたザイル

hoshi図書館に置いてあったので、借りてきました。

「星にのばされたザイル」は、ガストンレビュファによる「星と嵐」「天と地の間」に続く三部作
の最後を飾った作品です。

7つの印象的な登攀の記録です。
どれもすばらしいクライミングです。何回観てもクライミングシーンは飽きません。
どうしてあんなに身のこなしが軽いのでしょうか。
ビブラム底のごっつい登山靴で軽々と登っていくレビュファが本当に羨ましい。

ジャケットなど着ずにいつも派手なセーターを自然に着こなしているのもレビュファ流。私も一時あのセーターに憧れて、バーゲンで手に入れた似たようなデザインのセーターを着てゴキゲンだった頃もありました。

アルプスには草付きなどというブッシュはどこにも見あたりませんね。
あるのは、花崗岩の大岩壁と、青白い氷河、それに急峻な雪壁と蒼い空。
やはり、憧れます。


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花崗岩と氷雪の前では
クライマーは陶磁器のような存在だ

永遠の像と相対しては
脆さそのものの姿だ

だが意志があれば道は通じる
理解する心さえあれば
計り知れない喜びが生まれる

アルピニストは星に届くまで
そのザイルをのばすのだ


ガストン・レビュファ(近藤等 訳)

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2004.08.02

父と暮らせば

宮沢りえの魅力のとりこになった1時間40分でした。
井上ひさしの同名の戯曲を映画化したものです。

原爆投下から3年後の昭和23年の広島が舞台。
宮沢りえの恋人役(浅野忠信)も出てきますが、実質的には宮沢りえと原田芳雄の二人芝居です。

観ている私達ひとりひとりが「生きている」という意味を考えさせられる映画だと思います。
広島弁のやりとりがとてもよく活かされていて、さらには宮沢りえ演じる美津江のけなげな切ない心情が観るものの心を揺りうごかします。

死ぬのが自然で、生き残るのが不自然だった8月6日を生き残り、肉親や親友の死を目の当たりにしながら「私は決して幸せになってはいけない」と自身に言い聞かせながらひっそりと生きる美津江。
そんな美津江の悩み、苦しみが亡き父竹造(原田芳雄)を現世に呼び戻します。

娘の幸せを願い、なだめすかしながら娘の気持ちを前向きな人生に歩ませようとする竹造の姿が感動的でした。竹蔵が結婚に背を向ける娘にむけた言葉は心に残りました。

原爆をテーマにした映画はこれまでにもたくさん作られましたが、いままでの映画とは違った境地を切りひらいた佳作だと思いました。

この夏、ぜひ岩波ホールに足を運んでください。
(黒木和雄監督 上映は7月31日(土)より12月下旬まで)

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