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2007.04.06

権威勾配

山岳雑誌「岳人」の4月号の第2特集は「山岳遭難のヒューマンエラー」。
事例(ケーススタディ)を通して事故に潜むヒューマンエラーの分析をしています。
なかなか読み応えのある特集でした。
この記事で、ヒューマンエラー遭難に因むキーワードの一つに「権威勾配」というエラーファクターがあることを知りました。

これは、上司と部下のように権威に傾きのある関係を言うそうです。
たとえば航空機を操縦するキャプテンと副操縦士の場合、緊急時に権威を持つキャプテンの間違いを副操縦士が正すことができずに事故につながる、というケースが以前よくあったそうです。

これを読んですぐに思い浮かべたのは、今から8年前に起きた私の山仲間の遭難事故でした。
リーダーだった彼は豊富な経験と優れた技量をもつクライマーでした。
3人パーティーでした。他の二人は若く経験も技術も彼には及びませんでした。
リーダーの彼とメンバーの若い二人との間には明かな権威勾配の関係があったのだと思います。

数ピッチに及ぶ垂直の岩場を越えて、懸垂下降地点に差しかかった時でした。
普段なら必ず行うロープ末端の結束。
下降器を使って懸垂下降に移り、万が一制動が効かなくなってもロープの末端を結束していれば、それ以上は墜ちないためのバックアップです。

その日に限って、いつもは慎重な彼がロープの結束をしないで懸垂下降態勢に入ろうとしました。
その時、若いメンバーが注意しました。
「Jさん、ロープの末端を結ばなくてもいいんですか?」
彼は言ったそうです。
「今日はいいんだ。」と。
そして、それ以上その若いメンバーは注意できなかったそうです。

そして悲劇は起きました。
懸垂下降中にロープから下降器がすっぽ抜けてJさんはそのまま墜落してしまいました。

このように権威勾配は時に悲劇を生み出します。
が、適度の権威勾配がなければ、秩序や統率がなくなってしまい、パーティー個々がバラバラになってしまいます。
リーダーとメンバーの間には、お互いに意見を言いやすい関係を保ちながら、いったん方向性が決まればリーダーを中心に適度な上下関係を形づくっていくことが理想なのだと思います。

ところが、そういう人間関係づくりが難しくなっているだけに、煩わしさから逃れて気楽さを求める人たちが単独行に向かっているのかも知れません。
それでも、私はパーティー登山が好きです。
権威勾配・・・つねに念頭においておくべきファクターですね。

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Comments

Nobさん、こんにちは
いつも楽しく、興味深く、拝見してます。
こちらへはコメ初めてですが、
12月の天覧山アイゼントレでお世話になった、取手の栗です。(分かりますか?)
山仲間の事故・・・難しい問題ですね。
たとえば、今、会を見学中?ですが、
自分がもし入って、今回書かれているような場面に出会ったら、
言えるだろうか・・・などと、思ってしまいまいした。

ところで、こんな所ですみませんが、
会のスケジュールに4月の集会予定が入ってませんが、
もし決まってましたら教えて頂けませんか?
よろしくお願いいたします。

Posted by: kuku81 | 2007.04.08 08:01 AM

kuku81さん こんにちは
ご無沙汰しております。
コメントありがとうございました。
「権威勾配」の問題は難しいですね。
強くてもいけないし、弱くてもいけません。

kuku81さんは会を見学中?でしたよね。
すぐに入会を認める会もありますが、当会のように何度もお見合いして、「この会のメンバー達となら・・」と「この方となら・・」が自然な形で一致したときに入ってもらうスタイルも満更悪くないでしょ?(笑)

4月以降の予定表、なるべく早く掲載します。
もう少し待ってください。

Posted by: Nob | 2007.04.08 09:22 AM

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