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2006.10.31

エクササイズ(Ex)

あまり知られていませんが、この7月に厚生労働省が「健康づくりのための運動指針2006(エクササイズガイド2006)」を策定しました。

この指針で定義されている身体活動の量を表す単位が「エクササイズ」です。
これを「指針」の中の文章で説明してもらうと、

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身体活動の強さと量を表す単位として、身体活動の強さについては「メッツ」を用い、身体活動の量については「メッツ・時」を「エクササイズ」と呼ぶこととしました。

(1) 「メッツ」(強さの単位)
身体活動の強さを、安静時の何倍に相当するかで表す単位で、座って安静にしている状態が1メッツ、普通歩行が3メッツに相当します。

(2) 「エクササイズ(Ex)」(=メッツ・時)(量の単位)
身体活動の量を表す単位で、身体活動の強度(メッツ)に身体活動の実施時間(時)をかけたものです。
より強い身体活動ほど短い時間で1エクササイズとなります。
(例)
3メッツの身体活動を1時間行った場合:3メッツ× 1時間=3エクササイズ(メッツ・時)
6メッツの身体活動を30 分行った場合:6メッツ×1/2時間=3エクササイズ(メッツ・時)
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メッツは運動の強度を表す単位。
運動指針と併せて発表された「健康づくりのための運動基準2006」によれば、
普通の歩行が3メッツ、
早足が4メッツ、
かなりの速歩(分速107m ≒時速6.4km)で5メッツ、
ジョギングが7メッツ、
最高値は階段を上がるランニングで15メッツ、
そして1~2kg程度の荷物を背負った登山は7.5メッツだそうです。

さて、指針を策定した厚生労働省の狙いは、日ごろからの運動習慣を身につけ、健康の維持・増進、生活習慣病の予防です。

そこで、先にご紹介した運動量エクササイズを用いて、生活習慣病に罹らないようにするための目標値を掲げました。
それが「1週間で23エクササイズ以上の活発な身体活動(運動・生活活動)を行い、そのうち4エクササイズ以上は活発な運動を行う」という目標です。

山に行かない週の私の場合を計算してみました。
月曜~金曜は通勤時の歩行は早足で一日約55分ですから、4メッツ×55/60hr×5日=18エクササイズ
15階にあるオフィスまでの階段昇りが一日5分で、8メッツ×5/60hr×5日=3エクササイズ
週2回出かけるジムで時速6.5km・傾斜6%の速歩を約40分、軽い筋トレを約40分
5メッツ×40/60×2+3メッツ×40/60×2=10.5エクササイズ
併せて31.5エクササイズ、そのうち活発な運動が10.5エクササイズですから、目標値をなんとかクリアしています。

しかし、山に行く週は仮に実歩行4時間程度のハイキングであっても、
7.5メッツ×4hr=30エクササイズ
となり、大幅達成です。
しかも荷物は最低でも5~6kg背負いますから、登山がいかに生活習慣病の予防に効果的かを端的に表していますね。

月に2回はハイキング又は歩きの要素を交えたクライミングを行い、山に行かない週はスポーツジムで意識的に体を動かすようにすれば、健康で山に行くことのできる最低限の体は維持できるのかなあと思っています。

自分の体力、運動量を感覚的にではなく定量的に捉えておくことも必要だと思いますが、いかがでしょうか。

くわしくは山形県のホームページをご覧下さい。あなたのエクササイズ量を簡単に計算できるファイルも掲載されています。

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2006.10.28

秋、農村を歩く

061028kaisuka01お天気に恵まれた土曜日。
南房総の農村部を歩いてきました。

あぜ道を歩いていると、背丈以上の高土手の草刈りをしている光景に出会いました。

傾斜地の水田ではどうしても畦が高くなります。
畦の管理をおろそかにすると、水漏れや崩れの原因になるので農閑期であっても管理は怠りません。
こうした日常の手入れが国土の保全、災害防止にもつながるのです。

海と山と緑にめぐまれた南房総地域ですが、山間傾斜地の多い、いわゆる中山間地域で農業を営むということは労力的にとてもたいへんなこと。
平野部にくらべて5割以上も耕作放棄地が増えているのも、ある意味仕方のない現実です。

061028kaisuka02しかし、そんなハンディを乗り越えて手入れの行き届いた農地がひろがる風景はほんとうに美しいですね。

千葉県にも棚田が広がる風景が少しだけ残されています。
日常生活のストレスから逃れて、美しい農村風景の中に身をおくとしみじみと心が洗われる思いに浸ることができますが、都会の人々にはぜひ中山間地域の農業の厳しさにも思いを馳せてほしいものです。

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2006.10.24

ミスに気づくこと

「岳人」11月号の連載「30の質問」にプロガイドの近藤邦彦氏が登場しています。

かつて日本を代表する先鋭的クライマーだった近藤さんも、写真で拝見する限りでは還暦を過ぎ穏やかで笑顔の素敵な好人物といった印象です。

30の質問に対する氏の答えは、そのどれもが経験に裏打ちされた重みのあるものでした。

Q14
危険と安全をいつもどう見極めながら行動していますか。

A14
いきなり瀬戸際まで行くような事故なんて滅多にない。小さいミスに気づくかどうかだと思う。死ぬような事故というのは、小さいミスを重ねた結果としてやってくる。・・・(以下略)

この言葉を読み返してハッとしました。
たしかに、私自身の事故(幸い滑落による関節の脱臼とか転倒による頭部裂傷程度だった)を思い起こしてみても、その前に事故の前兆となるようなミスを犯しています。

肩の脱臼につながった滑落の際には、正規のルートを外れて行動したことが原因だったし、転倒して頭部を裂傷したときは「まだいいや」とアイゼンを装着することを怠った直後でした。

2つの事故とも小さなミスを見逃してしまった直後に起きています。
小さなミスに気づくかどうかで、それが事故につながるかどうかの分岐点になってしまうのですね。

いま千葉県勤労者山岳連盟のサイトで「ヒヤリハット事例集」が掲載されていますが、小さなミスをミスとして意識の底にインプットできるか。
そして、ミスをけっして重ねないという意識を強くもつこと。
これら当たり前のことの重要性を改めて思い起こしてくれた「岳人」の連載記事でした。

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2006.10.20

GPS vs 地形図

先日歩いた那須のGPSトラック(軌跡)データです。
カシミール3D上に1/25000地形図を呼び出して、そこにトラックデータをプロットしてみました。

061015nasu_data2_1那須連峰は標高の割に高山性を色濃く帯びた山容で、だいたい標高1600m以上は笹原やハイマツ帯になっています。
おかげでGPS衛星の電波をよく受信できるため、位置精度はかなり良い成績でした。
その証拠に登山口の駐車場から大峠までの稜線歩きでは登山道とほぼ一致した軌跡を示していますね。

ところが、大峠から三斗小屋温泉までの樹林帯になると軌跡と登山道を示す破線記号はかなりズレを示します。
沢を3本渡渉し、支尾根を2つ回り込みますが、GPSの軌跡はおおむね登山道の西側を辿っていました。

うーん、どっちが正解なのでしょうか?
三斗小屋温泉に至ると軌跡と登山道は再び一致します。
GPSは樹林下では電波を拾いづらいので位置精度は悪くなりますが、おなじく樹林下にある三斗小屋温泉の位置は正確だったので、今回程度の樹相ではあまり影響は少ないのかもしれません。
ということは、地形図の登山道の表示位置に誤差があるのかも?
しかし、峠沢から中ノ沢にかけての軌跡も少し不自然だし、判断は難しいですね。

地形図も最新版はGPSを活用した精度の高い測量成果をもとに作成されていますが、すべての事物をGPSで測っている訳ではありません。
従来からの航空写真測量も併用しているだろうし、樹林下の登山道などの表示にはかなりアバウトな面もあるのでしょうね。

さて、軌跡データの表示は、三斗小屋から姥ヶ平分岐手前で忽然と消えています。
なぜか?
答えは簡単です。使いかけの電池を使ったたためのバッテリー切れでした。(笑)

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2006.10.16

紅葉の那須連峰を歩く

何年経っても地形図を読みこなすのは難しいものです。

沢登りや道のない山に入るときは真面目に地形図とにらめっこすることも多いのですが、そうでなければ地形図そのものを出すこともほとんどありません。
かといって、地形図を忘れたりすると途端に不安感に襲われてしまうから不思議なものですね。

雪山などでは必携の地形図。
その地形図とコンパスを使いこなすトレーニング山行を那須連峰で行いました。
講師はなんと!小屋番子。
したがって練習内容の程度は知れたものです。(笑)

紅葉が最盛期を迎えた那須の山々でしたが、あいにくの靄(もや)と山頂部の上に居座る憎らしい雲のおかげで、日に映える美しい紅葉を期待した身にはガッカリの一日でした。
しかし、目的は新人歓迎(なんと37歳の掘り出し物!)と地図読みですからあまり文句は言えません。

さて、地図読みの方は、コンパスとの併用による現在地の位置出し、進む方向の線出しは皆さん合格でした。
しかし、地図読み技術はそれだけではありません。

地形図はさまざまな情報の宝庫です。
那須岳周辺には噴気孔など珍しい記号の数々、ロープウェイやリフトの架線記号、植生記号の多様さ、河川や沢筋、尾根筋の形状などなど、地形図独特の面白さが詰まっています。
植生一つとっても、広葉樹、針葉樹、笹原、ハイマツ帯と非常に変化に富んだ植生をもつ那須連峰です。
地図上の植生記号などで、自分のいる位置の推定がある程度可能なこともわかってもらえれば良かったと反省しています。

コンパスを使った単なる位置出しでは味わえない面白さを実感してもらいたかったのですが・・。
次回、もし機会があればその方向で準備したいと思っています。
そのあたりの時間が足りなくて中途半端なトレーニングになってしまったのはちょっぴり残念。

ついでにハンディGPSの代表的な使用方法を紹介しましたが、これは使えますね。
2万円しない値段で、命拾いする可能性を秘めたツールだと改めて確信しました。

最後に、紅葉最盛期の那須連峰をお楽しみください。
(※各画像クリックにて拡大画像が表示されます。お好みにより大きな画像をお楽しみ下さい。)

逆光に輝く朝の朝日岳 隠居倉のピーク 錦秋の中に浮かぶ鏡沼
1826m峰にて記念撮影 淡い紅葉の濃淡が美しい 大峠めざして笹原の尾根を進む
三本槍岳から大峠に至る緩やかな稜線 ひょっこり顔を見せたマムシ君 これぞ紅葉!
錦秋の下り道に思わず笑みが・・ 朝日岳東南稜 チシマザサとツツジが織りなす錦の妙


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2006.10.10

紅葉前線

遭難、遭難、遭難が続いたいやな3連休でしたね。

さて、小屋番子はどこに居たかというと、現在入院中の伯母が住んでいた空き家の管理に栃木県は鬼怒川温泉にほど近い藤原町に。

Rimg0010_edited1s8日は山麓でも風が強くて栃木県北部の山々の山頂部には雲がひっきりなしに去来していました。

しかし、9日になると一転して好天に恵まれます。
日光表連峰の山々の奥には奥白根山が初冠雪に輝いていました。

鬼怒川、今市と訪れたついでに那須高原にも立ち寄りました。
山麓の紅葉はこれからですが、稜線上は今が最盛期のようでした。

今週末、那須の紅葉はピークを迎えそうです。

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2006.10.09

気象遭難

今回の白馬岳の遭難事故を聞いて、すぐに思い出したのが1989年の立山連峰大量遭難でした。
ひょっとして時期も同じだったかも?と調べてみたらやはり今回と同じく10月8日のことでした。

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1989年(平成元年)10月8日、室堂から立山・雄山を経て剱御前小屋に向かっていた中高年の10人のパーティーが吹雪と疲労のために行動不能となりました。
当日、寒冷前線が通過するのを知っていながら出発。

吹雪の中を不調者を連れたまま行動を続け、夕方になって比較的元気だった2名が救援を求めに先行、剱御前小屋にむかったが別山でビバークせざるをえなくなり、翌日救助されました。
そして残念ながら吹雪の稜線上にいた8名は持参装備も有効に活用できないまま全員凍死しました。
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あの事故は本当にショックでした。
まさしく「気象遭難」の典型例です。
山が秋から冬に衣替えする、端境期に起こった悲劇でした。

そして、今回、同じような事故が再発してしまいました。
89年の事故との違いは、リーダーが山岳ガイドだったことです。
サブとして、補助ガイドも付き添っていたので、2名のプロに5名の客という構成でした。

遠く九州から3連休を利用して紅葉の北アルプスを楽しもうとしたのに、悲劇的な結末になってしまいました。
報道では、稜線上に残された2人はツェルトもシュラフカバーも強風で飛ばされてしまう中で、ハイマツの窪地でビバークしていたそうです。

パーティーとして、ターニングポイント(引き返し地点)の見極めはどうだったのでしょうか。
60歳以上のメンバーを連れて、富山県側の長いコース選定に無理はなかったのでしょうか。

10月上旬の秋山では、万が一のためにピッケルやアイゼン、冬山防寒着の用意など一般的にはしません。
しかし、秋山での急激な天候変化は常識でもあります。一気に冬山に変貌することもよくあることです。

この時期に私たちができる気象遭難の予防策は、最新の気象情報の把握の上で、持参装備と気象情報を秤にかけて「ヤバイと思ったらいさぎよく引き返す勇気を持つ」ことでしょうか。

今後の再発防止の観点できちんとした検証が待たれます。
合掌

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2006.10.04

教科書の記憶

061004kamogawa02小学校の低学年の頃だったと思います。
社会科の教科書に「私たちの住むまち」なんていうタイトルで、教科書の見開きいっぱいに美しい風景が描かれていました。

そこには山あり、海あり、漁港あり、街あり、田んぼありの典型的な日本の農山漁村の風景が描かれていたように記憶しています。
景色のそれぞれに「てつどう」「ぎょこう」「すいでん」「かじゅえん」などと説明書きが付けられていました。

061004kamogawa01私はその教科書がいつまでも忘れられなくて、教科書に出ていた「まち」はどこにあるんだろう、と子供ながらに楽しい想像をめぐらせていたものです。
そんな教科書の世界が現実にあるとしたら、ここ房州鴨川などは第一の候補だろうなあと思います。

千葉方面から車を走らせて「鴨川道路」の山越えをすると突然海と平野が視界に飛び込んできます。
低山とはいえ、それなりの険しさを見せる房総丘陵の狭い空間から突如として解き放される開放感は何ともいえません。
無限の広がりを見せる太平洋に臨んで、山と平野とが適度に調和した箱庭のような地形を見せてくれるのが鴨川です。

タイトな仕事の移動の合間に地元の人に案内していただいた展望台からは、まさに小学校の頃に見た教科書の世界が広がっていました。
061004kamogawa03

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