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2005.01.26

ドキュメント 雪崩遭難

ドキュメント 雪崩遭難「雪崩が起きるとは思わなかった」
「そこで雪崩が起きたことがない」
・・・この二つの言葉を私たちは禁句にすべきだ。

上記は本書のあとがきにある一節である。
先日の雪崩講習会の前後にかけて読み終えた。
こんなことを書くと不謹慎だと思われるかも知れないが、誤解を恐れずに言えば「ぐいぐい引き込まれる魅力ある」本だった。

恐ろしい雪崩遭難の実例を検証、事故の実態を克明に記している。
1997年から2002年までの間に起きた8件の雪崩事故を取り上げている。雪山登山、スキー、スノーボードなどタイプ別に、雪崩の発生、捜索救助に至るまでの経緯を生存者や救助者の生の声をもとに再現している。事故の原因と対策を検証する。

8件どこからでも読み始められる。
一番最初に目を通したのは5ケース目に描かれた剱岳・早月尾根上の雪崩事故。安定した尾根上から一瞬にして5人の登山者が池ノ谷に消えた。
なぜ?どうして?
それまで尾根筋ならまず雪崩は大丈夫と漠然と考えていた自分だったが、このケースを読み進むうちに頭を思いっきりなぐられた感じがした。
原因は、あられの弱層に載った上載積雪が8人の登山者のインパクト(人為的刺激)に耐えられなかったことによる。尾根筋を普通に歩いていても、ちょっとしたルートどりの悪さから生と死が分けられる残酷さに背筋が寒くなる。

本書に紹介されている、ある大学教授の指摘を引用する。
「雪崩発生の危険は、弱層の強度とその上に降り積もった積雪重量と人為的刺激の強度の兼ね合いである。・・・弱層テストの一番の目的は、弱層の有無とその強度を調べること。・・・」
これから登る斜面に少しでも不安があれば迷わずに弱層テストをしよう。

また、各事故ケースの末尾には「教訓」が記されている。
・弱層テストは必ずおこなう。
・セルフレスキューには雪崩ビーコンは不可欠である。
・一人一人間隔をおいて行動する。
・不幸にして雪崩に巻き込まれたら、最後まで生きる望みを失わずにあらゆる努力をする・・・等々
逆に言えば、それらをきちんとやっていれば救えた命もあったということ。
ケースによっては三種の神器(ビーコン、ゾンデ、シャベル)を所持していても家に置いてきたとか、ビーコンを持っていてもスイッチが入っていなかったなど、悔いの残る実例も意外なほどあることに驚く。

雪崩を防ぐには雪崩の科学的知識を謙虚に学ぶことと登山経験を重ねること。この二つをバランス良く高めていくしかないと思う。そのどちらかが不足していても危ない。

最後に本書にある唐松岳・八方尾根スノボー遭難事故の遺族であるニュージーランド人の母親の言葉を引用したい。
「もし、雪崩ビーコンをつけていたら息子は発見されるチャンスがあったと言われました。バックカントリーに行くなら雪崩教育を受け、雪崩ビーコン、シャベル、ゾンデを持ってほしい。これらの装備は700ドルあればそろえられる。・・・子供たちの命の値段はいったいいくらですか?」

ドキュメント雪崩遭難

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